パンスターズ彗星をとらえる2017/01/06

20170106パンスターズ彗星(C/2015 ER61)
昨夜から今朝にかけてもよく晴れました。昨日明け方にうまく撮れなかったネオワイズ彗星(C/2016 U1)のリベンジも考えましたが、今年期待の彗星の中で、やはり撮影条件が差し迫って厳しいパンスターズ彗星(C/2015 ER61)を撮ることにしました。

パンスターズ彗星は現在明け方南東のてんびん座にあって、薄明開始時の高度が20数°。我が家からはもろに街灯や電線、樹木が密集している方向で、見たところ撮影可能時間は隣家から顔を出した直後の10分程度でした。西から薄雲が広がっている中で究極の挑戦でしたが、取りあえず撮影成功(左画像)。上が天の北方向、上下画角は約1°、彗星位置基準の合成です。冬の低空なので星像は倍に膨らみ、ガイドエラーも大きいです。右側は街灯に照らされかぶっていますが、こういうのはフラット補正で取れないですね。

彗星は短い尾が出ています。光度は13等程度で、5月のピークに向けて順調のようです。ただ今後はとても低くなり、我が家からはうまく障害物の隙間を捕らえたとしても1、2回チャンスがあるかどうか…。今朝の画像は貴重なショットになりそうです。

(追記)撮影中とても寒いと感じましたが、あとで近くのアメダスデータを見ると軒並み-5度を下回っていました。当地・茨城県南でここまで冷えることはなかなかありません。

今日の太陽2017/01/06

20170106太陽
昨夜から晴れが続いています。ただ、ときおり雲が湧いて、また消えるといった様子。(昼過ぎからは巻雲が多くなりました。)

20170106太陽リム
左は11:30過ぎの太陽。光球面は静穏のままですが、右リムのプロミネンスには久々にワクワクしました。3箇所から大きく吹き出ており、それぞれ個性豊かな形をしていますね。1、2日で見えなくなってしまう側なのが惜しい…。

午後には淡い上部タンジェントアークが見えました。(暈の一部が明るいというのではなく、上部タンジェントアークとして光っていました。)時々観察しましたが他には見えず。

2017年で最も日の出が遅いシーズンが来てます2017/01/06

★ブログ内で「日の出・日の入り」や「暦」をテーマに取り上げた関連記事・アーカイブは別ページにリストアップしています。日出没時刻やその最早最遅日は年や場所で変化しますから、記事日付をよく確認の上ご覧ください。

「日の出がいちばん遅いのはいつか?」という質問や検索が一番多くなるのはなぜか年末のようです。おそらく多くの方が「日の出がいちばん遅い日」も「日の入りがいちばん早い日」も「arround 冬至」だろうと考えてしまうからでしょう。かつて私もそう思っていました。まぁ大きく外れてはいませんが、実際に調べると「日の入りがいちばん早い日」は12月上旬で、「日の出がいちばん遅い日」は1月上旬。冬至を基準にして、それぞれ10日から20日前と、10日から20日後、ということです。場所を定めないと日付も変わるため、日本全国では幅があります。いずれにしても年始に日出最遅日(日の出がいちばん遅い日)が来てしまうため、せっかくそれを記事にしても年末には忘れ去られるという繰り返し。やれやれ(笑)。

朝の太陽位置・2017年1月
どうしてこうなるのか、2016年12月10日の記事で日没と太陽の位置変化を追いかけたように、朝の場合も見てみましょう。ステラナビゲーターを使って、昨年12月中旬から今年1月中旬まで5日おきに太陽がどの位置からどういう風に登ったかシミュレートしてみました(左図)。

この図で、オレンジ色の太陽/文字は「日出時刻に太陽がどこから顔を出したか」を示しています。対してクリーム色の太陽/文字は「日出後、決まった時刻(この例では7:00)に太陽がどこにあるか」を示したもの。 (※日出時刻はバラバラですのでご注意。)例えばいちばん左の太陽は1/20のオレンジ色太陽位置から1/20クリーム色太陽位置に向かって日周したことになります。縦横罫線は1°刻みの方位・高度ですから、1ヶ月あまりのこの位置変化は双眼鏡の視野に収まるほど狭い範囲で起こっていることが分かります。

「日の出がいちばん遅い」ということは、登った直後、地面からあまり離れていない太陽を定刻に観察したとき「いちばん低い」ということです。この図では1/5クリーム色太陽が一番低いですね。(※毎日作図すると1/7が一番低いです。)これは冬至頃に太陽が「いちばん右寄り(南寄り)に登る」こととは別なのです。作図の場所は当ブログ基点の茨城県つくば市ですが、日本全国で概ね似た傾向です。つまり1月上旬を中心に「いちばん低い」=「日の出が最も遅い」太陽が登るというわけでした。ところがこれ、同じ冬期であっても年号が変わってしまってますから、日出/日没・最早/最遅の組み合わせでもっとも早く訪れるのは「日出最遅」のイベントなのです。

2017年日出最遅日マップ
ところで、日出最遅日の分布を知りたくて去年の記事の中で計算結果を基に地図を描きました。このときは県別(県庁所在地での日出最遅日)のおおまかな地図だったので「もっと精密に描きたい」という思いを1年間引きずっていました。そこで今年はお正月3日かけてプログラムを作り、去年より精密な日出最遅日マップを仕上げました。右図がその結果です。青線が日出最遅日の境界、ライトグレイの格子線は2°ごとの経緯線です。

元日の樺太付近に始まり、1日ごとに南へ降りてきます。今日は南東北や北関東、北陸まで来ました。みなさんの街はいつですか?境界線は一見シンプルですが、わずかに右上がりになっていますよ。日本でいちばん日出最遅日が遅いのは最南端の沖ノ鳥島です。

この図は標高を考慮しない計算なので、特に境界近くでは実際の標高に応じて1日程度の差が生まれます。ユーティリティ:太陽と月の時刻表/夜空の時刻表の「日出没の最大最小」は標高も考慮していますから、地図の結果と異なるところがあります。(例:静岡や山梨は地図では7日ですが、富士山山頂は8日が最遅日です。)さて、この結果を何人の方が年末まで覚えていられるでしょうか。

(以下は興味のある人向けのお話し)

地図を描いて驚きました。こんなにシンプルでいいんだろうかと。アーカイブ:地図で見る日出没の季節変化の日出没同時曲線ように高次曲線を予想していただけに拍子抜け。でもいくつかライン際の上下で検証したので、結果は合っているようです。細かく見ると緯線に平行というわけではなく、わずかに右上がりとなっています。しばらく考えて分かったのですが、この事象は連続のはずなので、もし世界規模で日出最遅日マップを描いたら西端はグルッと一周して東端の次の日につながっている、いわゆる「リンゴの皮むき」状態ではないかということでした。(まだ確かめていません。)

日出最遅日マップを描くのに気を付けたのは、曲線の境界判断がとてもシビアなこと。対象が日付のためちょっとした位置差で一気に日付が飛び、階段状の線になってしまうのです。位置分解能が曲線の精度を大きく左右します。かといって際限なく細かくすると計算時間が天文学的になってしまうでしょう。ほどよいパラメータを見つけるのに何度も描き直し、今回の画像の大きさ程度なら経度方向0.1°・緯度方向0.0001°という分解能が適切な落としどころとなりました。他のケース、例えば日没最早日マップなどは今日現在まだ試していません。いずれまた。日出没同時曲線もそうですが、標高まで考慮して更に詳しく描いてみたいですね。