とても特別な「普通の上弦」2016/12/07

20161207_09000月
今夜の月は上弦を迎えていました。真ん中でスパッと切れていて美しい…。左画像は18時過ぎの撮影で、太陽黄経差90.00°、撮影高度47.3°、月齢は7.86です。雲が多かったですが何とか工夫し、まさに上弦の瞬間を撮りました。このシンプルな「普通さ」こそが力強く繊細な美を醸し出しているように感じます。月面Xも良く見えていますね。

ところで今夜の上弦の月、実はとても特別であることをご存じでしょうか?多分かなりコアな天文ファンでさえも知らないことかも知れません。

このような上弦の半月は毎月1回程度見かけますが、正確な上弦の瞬間(太陽黄経差90.00°)に立ち会えるのは非常に希なんです。様々な条件に阻まれて…例えば日本から見えないタイミングだったり、低空で像が悪かったり、日没前で青空だったり……、一年中快晴だとしても、そんなこんなで見ることができないのです。今夜は90.0°になった時点ですっかり暗くなっており、またほぼ南中していて高度も申し分ない高さでした。お天気が良くなかったのはとても残念でしたが…。

どれほど珍しいことなのか、具体的にプログラムを組んで計算してみました。(※観測地は茨城県つくば市基準にしましたが、おおよそ日本内ならだいたい一緒です。)2011年初めから2020年末まで10年間に起こる上弦は全部で124回。順に条件を狭めてゆくと次の様になりました。

  • 観測地の空のどこかに見えている…→61回

  • 昼間は除外する…→26回

  • 高度30°未満も除外する…→16回

  • 日没後1時間未満の薄暮も避ける…→12回

  • 写真撮影向けに高度45°未満をNGとすると…→6回

「ある程度暗い時間に高い空で観察や撮影できる」のは、なんとたったの6回になってしまいました。面白いことに今日よりも前は2011年12月2日の1回だけ。残りは今日を皮切りに2017年3月5日、2017年12月26日、2019年3月14日、2020年4月1日に起こります。もちろんこれらには天候不順という要素は加味していません。三日に二日は雲が出てしまう日本ですから、全てのチャンスに晴れることはまずあり得ないでしょう。

「何でもない普通の上弦」を見るにも五年、十年といった長いスパンの待ち時間が必要です。まぁそんな細かいこと気にしなければ良いんですけどね。でもせっかく今日のような貴重な機会が巡ってくるのだから、スルーせずに見逃さない様にしたいと思う次第。

参考:
アーカイブ:月の形(黄経差72度以上、108度未満)

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