10月も日照不足なのでしょうか?2016/10/01

つくば市・9月総日照時間
10月になりましたが、当地・茨城県南は時折小雨が降っています。近くで開催予定の土浦花火大会(日本三大花火大会のひとつ)は予定通り夕方に実施するらしいですが、観客はさぞ寒い思いをすることでしょう。

さて、気象庁サイトで今年9月分の気象データがすべて閲覧できるようになったので、9月29日の日照不足記事に続き、改めてまとめました。使用データは前回同様に茨城県つくば市です。(※前記事をお読みでなければ先にご覧ください。)

まず左グラフは9月の30日間にどれくらい日照があったかです。現在使われている気象庁の平年値が1981年から2010年の30年間による算出なので、その10年前の1971年から今年2016年までの46年間を対象に、各年の9月のみの総日照時間を計算しました。ご覧頂くと分かるように、平年値による9月のみの総日照時間に対して、今年の日照が飛び抜けて少ないとは感じません。でも21世紀になった頃から…特にここ5年ほど日照が多い状態が続いていた傾向を考えると、確かに最低レベルですね。山間で雲が湧きやすいとか盆地で日照が遮られるなど土地柄依存の特徴が無い関東平野部みたいな所なら、どこも概ねこの傾向は同じと思います。

ではこの総時間に至るまで、1ヶ月間で日照がどのように推移したのでしょうか。積算日照のグラフも描いてみました(右下図)。青系の線は総時間が多い方から1位と2位の年、緑系の線は総時間が少ない方から1位と2位の年、赤線は今年2016年です。また基準となる平年値は平均と平滑処理を経て算出されたもので、単純平均と若干異なります。ここではオレンジ実線が平年値、オレンジ点線が単純平均として両方示しました。9月の推移は決して単純ではなく、たった46年間でもこれだけバラエティに富んだものであることが分かりますね。

つくば市・9月積算日照時間
この秋が「日照不足」と問題にされるのは、9月の総時間が少ないという単純な話ではありません。このグラフで言うと「平年値の傾斜と比べて、なだらかな部分が長すぎる」という点なのです。日照不足の期間ほどグラフが横ばいになります。今年は上旬のスタートダッシュが2011年や1992年より上回っていたおかげで総時間不足はあまり目立ちませんね。どこかで挽回できれば結果的に総時間は平年並みをキープするけれど、でも長期の日照不足が頻発すると特に植物への負担が増加します。

植物の成長は足し算のように貯金や挽回があまりできません。誤解を恐れず人間に例えれば「半月ほど断食した後、残り半月は二人前食べる生活」で健全な成長は無理、ということです。ただでさえ晩夏以降の日照は原理的に減り、時間だけでなく光量も弱くなるので、初夏の1時間減と秋の1時間減とでは持つ重みが違います。これ、洗濯していると気付きませんか?関東以北が記録的な冷夏に見舞われ農作物被害が数千億円に上った1988年に比べて、2016年は総時間こそ高いけれど、特に10日頃からのグラフ横ばい期間は1988年を凌ぎますね。曇天や雨天が一概に悪者とは思いませんが、平均から大きく外れた気候は何かと自然界に負担がかかります。

この状況は10月を迎えた今日以降もさらに続く見込みです。これって、一時的に暴れまくる台風よりも始末に負えないことかも知れません。私たちには無駄なエネルギー消費を無くすことくらいしか自然界に働きかけられないのが、何ともやるせないですね。

参考:
10月の日照は足りてますか?(2016/10/19)……継続した記事です
アーカイブ:茨城県の気象平年値
アーカイブ:茨城県つくば市の気象傾向
気象庁:天候の状況

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