太陽に近づくイカロス ― 2016/06/14
5月27日の記事で触れたように、金星は6月7日の外合を過ぎて太陽の東側へと移動しつつあります。左は太陽を観測しているSOHO衛星(ESA・NASA)によって本日14日3:30(=13日18:30UT)に撮影された画像。太陽は中央白丸の位置で、それを隠す遮蔽の左に輝く金星が見えますね。数ヶ月後には「宵の明星」として夕空低空に姿を現すことでしょう。
さてこの金星を調べていたとき、見かけの上で太陽に接近する小惑星に気付きました。その名も「イカルス」。イカロス(=イカルス)とはギリシャ神話に登場する名工ダイダロスの息子。故あって父親の作った翼を体に付け、一緒に空を飛ぶことになります。飛んでるうち楽しくなったイカロスはつい高く飛びすぎ太陽に近づきました。ところが翼は鳥の羽をロウ付けしたものだったため、溶けてバラバラに!哀れイカロスは……というお話し。
実は小惑星イカルスの軌道はとても細長く、火星よりも遠い場所から水星よりも太陽に近くなる希有なコースを1.12年かけてたどります。翼こそありませんが太陽に接近する様子にちなみイカルスと名付けられたそうです。 今回実際に太陽へ接近するのは2日後の6月16日ですが、それに先だって本日14日「見かけ上で」太陽に接近しているところでした。
右はステラナビゲーターによる小惑星イカルスの見かけ位置。本日14日24時間の移動を3時間ごとに描きました。周囲の星は太陽に対して西(右)へ移動しますが、金星は太陽から離れる方向へ、そして間をすり抜けるようにイカルスが移動します。ただし小惑星本体はとても暗く、上のSOHO衛星画像にも写りませんし、太陽至近なので地上観測も不可能です。
小惑星イカルスは細長い軌道であり、その軌道面も地球軌道に対して23°弱しか傾いていません。ですから太陽だけでなく地球にも近づく可能性があります。時々世間を賑わす「地球近傍小惑星」のひとつなのです。(アポロ群に所属します。)
ものの資料には度々「19年に一度地球に接近」と書かれていますが、実際に軌道計算するとそうでもないようです。左はNASA・HORIZONSを使って1960年始めから2040年末までの小惑星イカルス接近を調べたグラフ。オレンジ線は太陽との距離(日心距離)、青線は地球との距離(測心距離=ほぼ地心距離)で、単位は天文単位(AU=149597871km)です。グラフが下がるほど地球や太陽に接近する状態です。また記事下には1900-2200年間に0.2AU以下まで地球に近づく日時と距離を掲載しました。
これを見る限りでは周期性はあるものの、地球大接近が19年周期というのはあまり感じられません。1968年の接近はとても騒がれたようですが、同様に近かった昨年はチラッとニュースで見かけた程度。毎年のように接近しますが距離のバラつきが大きく、彗星のように存在感のある尾を伸ばすこともないため、中途半端な情報ではつい忘れてしまいますね。現代ではもっと近づく小惑星がゴロゴロあるので、珍しくも何ともなくなってしまいました。哀れ、イカルス…。
※計算はNASA・Near Earth Object Programのデータによります。
※上記の表は最接近時の地心平均距離が0.2AU以下のケースのみをピックアップしました。
※1000万km以下のケースについてはピンク色の文字で表記しました。
さてこの金星を調べていたとき、見かけの上で太陽に接近する小惑星に気付きました。その名も「イカルス」。イカロス(=イカルス)とはギリシャ神話に登場する名工ダイダロスの息子。故あって父親の作った翼を体に付け、一緒に空を飛ぶことになります。飛んでるうち楽しくなったイカロスはつい高く飛びすぎ太陽に近づきました。ところが翼は鳥の羽をロウ付けしたものだったため、溶けてバラバラに!哀れイカロスは……というお話し。
実は小惑星イカルスの軌道はとても細長く、火星よりも遠い場所から水星よりも太陽に近くなる希有なコースを1.12年かけてたどります。翼こそありませんが太陽に接近する様子にちなみイカルスと名付けられたそうです。 今回実際に太陽へ接近するのは2日後の6月16日ですが、それに先だって本日14日「見かけ上で」太陽に接近しているところでした。
右はステラナビゲーターによる小惑星イカルスの見かけ位置。本日14日24時間の移動を3時間ごとに描きました。周囲の星は太陽に対して西(右)へ移動しますが、金星は太陽から離れる方向へ、そして間をすり抜けるようにイカルスが移動します。ただし小惑星本体はとても暗く、上のSOHO衛星画像にも写りませんし、太陽至近なので地上観測も不可能です。
小惑星イカルスは細長い軌道であり、その軌道面も地球軌道に対して23°弱しか傾いていません。ですから太陽だけでなく地球にも近づく可能性があります。時々世間を賑わす「地球近傍小惑星」のひとつなのです。(アポロ群に所属します。)
ものの資料には度々「19年に一度地球に接近」と書かれていますが、実際に軌道計算するとそうでもないようです。左はNASA・HORIZONSを使って1960年始めから2040年末までの小惑星イカルス接近を調べたグラフ。オレンジ線は太陽との距離(日心距離)、青線は地球との距離(測心距離=ほぼ地心距離)で、単位は天文単位(AU=149597871km)です。グラフが下がるほど地球や太陽に接近する状態です。また記事下には1900-2200年間に0.2AU以下まで地球に近づく日時と距離を掲載しました。
これを見る限りでは周期性はあるものの、地球大接近が19年周期というのはあまり感じられません。1968年の接近はとても騒がれたようですが、同様に近かった昨年はチラッとニュースで見かけた程度。毎年のように接近しますが距離のバラつきが大きく、彗星のように存在感のある尾を伸ばすこともないため、中途半端な情報ではつい忘れてしまいますね。現代ではもっと近づく小惑星がゴロゴロあるので、珍しくも何ともなくなってしまいました。哀れ、イカルス…。
【小惑星イカルスが地球に接近する日・1900-2200年調べ】
日時 | 地心距離(AU) | 地心距離(km) |
---|---|---|
1902年6月11日 20:21 | 0.08447360 | 12637071 |
1921年6月15日 13:34 | 0.05725756 | 8565609 |
1940年6月20日 13:42 | 0.17471372 | 26136801 |
1949年6月11日 9:20 | 0.09869653 | 14764791 |
1968年6月14日 20:39 | 0.04248221 | 6355249 |
1987年6月21日 0:47 | 0.16072756 | 24044501 |
1996年6月11日 7:34 | 0.10119548 | 15138628 |
2015年6月16日 15:39 | 0.05383620 | 8053782 |
2043年6月13日 16:57 | 0.05862576 | 8770289 |
2062年6月18日 1:10 | 0.08340858 | 12477746 |
2071年6月10日 12:28 | 0.17943688 | 26843376 |
2090年6月14日 7:09 | 0.04352740 | 6511607 |
2109年6月19日 18:47 | 0.09889485 | 14794458 |
2118年6月11日 21:36 | 0.16208216 | 24247145 |
2137年6月15日 10:22 | 0.03955071 | 5916701 |
2156年6月18日 16:04 | 0.07035807 | 10525418 |
2175年6月23日 19:48 | 0.17218767 | 25758909 |
2184年6月13日 3:43 | 0.10697286 | 16002912 |
※計算はNASA・Near Earth Object Programのデータによります。
※上記の表は最接近時の地心平均距離が0.2AU以下のケースのみをピックアップしました。
※1000万km以下のケースについてはピンク色の文字で表記しました。