火星の衛星を撮影してみました2016/05/30

※2018年7月の火星大接近でも衛星撮影に挑戦しています(→関連記事)。併せてお読みください。

日付が5月29日に変わる少し前、地球接近直前の火星を撮影するのに併せてやってみたこと、それが「火星の衛星の撮影」です。火星にはフォボスとダイモスというふたつのお月さまが回っています。でも名が知られている割に、木星や土星のメジャーな衛星に比べ、観察や撮影例をプロやハイアマチュア以外であまり聞きません。挑戦意欲をそそられ、前々から撮影したいと思っていました。

火星の衛星たちは普段14等から15等といった暗さですが、衝や地球接近で火星本体が明るくなるのと一緒に11等台まで増光します。これだけ聞くと「余裕で写せる」などと思ってしまいそうですが、そうは問屋が卸しません。すぐ側にマイナス2等の火星がいるからです。母天体の光に埋もれることなく11、12等の衛星を捉えることは至難の業。できるだけ衛星が母天体から離れた位置を狙う必要があるのですが、今回の地球接近の場合、遠い方のダイモスでも火星中心からの最大離角は60秒角程度、フォボスは25秒角程度。火星本体の視直径が18.6秒角ありますから、離角は本体半径を差し引いて考えなくてはいけませんね。小口径で見えるメジャーな二重星くらいは離れているけれど、いっぽう光度差はシリウスA&Bよりもはるかに大きいです。恒星のような点光源ではなく火星本体が面積を持つため、各種の干渉縞や光学系の反射ゴーストが強くなる恐れもあるでしょう。

いずれにせよ、火星接近時でないとできないチャレンジなことは確かです。案ずるよりなんとやら、いろいろ条件を変えながら撮影しました。撮影後の画像処理も何十回となくやり直し、ようやくそれらしい像を取り出すことができました。下左は28日22:42撮影(前後4分間程度の画像を合成)の画像で、下右はGuideによる確認星図です。

  • 20160528火星衛星画像1
  • 20160528火星衛星の星図1

中央の明るいバッテンが火星。反射望遠鏡の斜鏡スパイダーによる回折を受けています。(※反射系で撮影する場合は必ずスパイダーの光条を衛星のいない向きにしなくてはいけません。)火星位置でスタッキング処理したため、数分間の火星+地球の公転で背景の恒星が移動しました。衛星も自転で若干移動しています。(※このときは両衛星とも最大離角位置ではなく、もっと近いです。)

続いて、念のために時間を空けて撮影した別画像。下左は23:38撮影(前後4分間程度の画像を合成)の画像で、下右はGuideによる確認星図です。こちらはフォボスが火星光芒に埋もれてしまいました。上画像と比較すると、恒星は右から左へ移動してますが、フォボスは火星に近づき、ダイモスは遠ざかるように動きました。

使ったのは16cm反射望遠鏡で、アイピースによる拡大撮影、光路の途中にフィルター付きという環境のため、内部で複雑な反射ゴーストが出ています。本来はこんな複雑な光学系を使うべきでないのですが、もともと火星本体を撮影する状態でそのまま衛星を撮ろうとしたため、汚い絵面になりました。とにもかくにも、何とか検出することができて満足。いつかもっとシンプルな光学系ですっきり撮影できたらいいなと思います。

  • 20160528火星衛星画像2
  • 20160528火星衛星の星図2

参考:
2016年火星の地球接近・アンタレス接近に関する記事(ブログ内)