気象衛星から奇跡の「地球と月ツーショット」2015/10/27


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まず左画像をご覧ください。気象衛星ひまわり8号が捕らえた2015年9月29日11:50の可視カラー画像(画像元:NICTサイエンスクラウド)です。何か気付きましたか?台風21号…?いえいえ、もっと外側です。

そう、左上のほうに「月」が写っています。ちょうど1日前に今年最大と騒がれた月が、たまたまひまわり8号の写野内に入ったのです。NICTサイエンスクラウドの「おしらせ」でこのショットを知ったときは、目から鱗でした。気象衛星を扱う方々には当たり前なのかも知れませんが、そうか、気象衛星でも月が写ることがあるのですね!ひまわり8号は昼夜問わず地球全体の画像を10分おき、日本付近を2.5分おきに撮影します。以前の気象衛星よりもインターバルが短くなったおかげで「気象衛星による地球と月のツーショット」が起こりやすくなったのです。

夜間の撮影では春と秋に太陽が写り込む時期があることを9月6日のブログ記事で紹介しました。考えてみれば太陽も月も同様なのですが、月の場合は地球を回る公転運動が加わり、また公転面が気象衛星のいる赤道面と一致せず、さらに気象衛星との距離も無視できない近さにあります。このため、どういうタイミングで地球とツーショットになるのか簡単には推し量れません。でもひまわりから見ればほぼ一日に一回、月が地球近くを左から右へ移動して見えるはずです。

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右画像は最初の画像の月付近を拡大したもの。(原画はさらに解像度が高く美しいです。)何も言われなければ国際宇宙ステーションからの映像と勘違いしそうですが、よくみると地球までの距離感が違います。気象衛星のおよそ100分の1という低高度を回るISSからは、もっと雲が近い印象です。それにしてもすばらしい!このままカレンダーになりますね(笑)

上画像のような素晴らしい光景が過去に撮られてないのか、将来はどうなのか、満月以外はないのだろうか…などと気になりました。そこでガッツリと軌道計算プログラムを組み(といっても概算ですが)、10分おきの撮影のタイミングで月が地球近くに来る日時を算出、それを元にNICTサイエンスクラウドの画像アーカイブを総当たりで調べてみました。…そうしたら、あったあった!結構写っていました。

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調べて分かったのは、「やはり地球の気象衛星だった」ということ。つまり、基本的には宇宙部分は要らないので捨てられる運命なのです。左は8月30日11:10の画像ですが、月が崩壊してパックマン状態ですね。地球撮影はみなさんお使いのカメラみたいに「カシャッ!」と済むものではないようです。全体をスキャンするのに時間がかかるわけですね。たまたまスキャンで上下にまたがってしまうと、このように公転でズレてしまいます。また太陽対策からか、地球より少しでも遠いとマスク処理で切り捨てられています。計算した全てのタイミングで月が写っているわけではなく、むしろ月が残っていたらラッキーと思うべきものでした。でもいろいろな月齢で地球と月のツーショットが揃うなら、理科の教育的に素晴らしい素材だと強く感じます。

調べた範囲では月齢10から20くらいの間で15シーン見つけました。それより細い月は暗くて目にとまらないか、写らないか、あるいはタイミングが悪いのか、皆無です。7月7日の運用開始以来、月が千切れずに綺麗に残っていたのは片手で数えるほどしかありません。(あくまでNICTのサイトで見える範囲の話しです。また気象庁サイトでは確認できません。)でもひまわり8号は長期に渡って運用されるでしょうから、今後に期待ですね。下にベストショットを三枚載せておきます。特に真ん中と右の2枚は地球に隠れる前と後のペアとなっていますよ。それから今日27日は満月ですが、今日の10:40および11:20撮影の画像に写っている可能性があるとの計算結果がでました。果たして実際は?結果はみなさんご自身でお確かめくださいね。(NICTサイエンスクラウドのひまわり画像閲覧はここをクリックしたサイトの左上「リアルタイム画像」メニューから。)

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    2015/8/2 13:30(月齢17.14)
  • 20150902-1420
    2015/9/2 14:20(月齢18.60)
  • 20150902-1500
    2015/9/2 15:00(月齢18.63)


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