巨大プロミネンスの変化2015/10/01

20150930プロミネンスの変化
今日は明け方前からすっかり曇り、夕方には雨が降る見込みです。ここ数日に興味深い様子を見せている太陽が観察できないのは残念ですが、自然のことで仕方ないですね。

昨日の観察で南半球西側に出ていた大きなプロミネンスは、結局朝から夕方まで見え続けました。小さな望遠鏡で解像度は低いですが、10:10頃に撮影した画像(左画像の左側)および16:10頃の画像(左画像の右側)を比べてみてください。ラスボス感が漂うとてつもない形です…。

6時間の間にかなり変形しましたが、短時間で跡形もなく吹き飛ぶこともある(例えばこのときのダークフィラメント)ので、今回は遅いほうです。日本では日没になりましたが、このあとヨーロッパやアメリカなどで更に遠くまで到達した様子が観察されました。今日はもう見えないようです。なお、画像中の青丸は地球の大きさを表します。プロミネンスはこんなに巨大なんですね!

「秋の日はつるべ落とし」を考える2015/10/01

幼少のころ実家では井戸を使っていました。でも「がらがら、ポチャン」の釣瓶(つるべ)ではなくモーターで汲み上げていましたから、釣瓶は模型や映画セットでしか見たことがありませんでした。実物がどれほど速く落ちるのか興味がありますね。

20150930夕焼け
さて、「秋の日はつるべ落とし」という諺に表現されている「秋の日暮れはあっと言う間」な感じはどこからやって来るのでしょうか。いつものように天文計算グラフを使って視覚的に考えてみましょう。ここでは「時刻と時間の違い」「早さと速さの違い」が大事なので慎重に使い分けます。計算は当ブログの基点・茨城県つくば市ですが、日本国内なら似た傾向と思います。また年度による差は小さいので、他の年でも同様に考察できるでしょう。(左は昨日の美しい夕暮れ。)

(11/25追記:「太陽と月の時刻表/夜空の時刻表」を作りました。地域を指定し、日出没や薄明時刻などを一覧で見ることができます。みなさんの地域で調べてみてください。)


グラフA・日没時刻の変化
グラフA・日没時刻の変化

グラフB・夜時間の変化
グラフB・夜時間の変化
まず、単純に日没時刻をプロットしてグラフAとしました。(以下、全てのグラフで縦の4本の線が二至二分の位置を表しています。)グラフA縦軸の単位は「時(刻)」で、分以下は少数換算です。(例:16:30は16.5、17:15は17.25。)こちらの記事にも書きましたが、日没時刻が一番遅いのは夏至を1週間ほど過ぎた頃、また一番早いのは冬至の2週間あまり前です。このふたつを山と谷にして、なだらかに変化していますね。秋分の頃は日に日に早く日没を迎えるので、これを「つるべ落とし」の原因とする考えが成り立ちそうです。

逆の発想で「早く夜が訪れる」転じて「夜が長くなった」のを原因とする見方もあるでしょうか?次のグラフBは夜時間を描いたもの。太陽が出ている時間帯を昼時間、それ以外を夜時間としました。単位は「時間」で、分以下は少数換算です。秋のころはぐんぐん夜が長くなっていくのが分かりますね。グラフAと違って、極大が冬至、極小が夏至に一致します。注意したいのは、夜時間の変化は日没だけでなく日の出にも影響される点。つまり、このグラフBの上下が夜の訪れの早さのみを表してはいないので、つるべ落としに感じる主要素になり得るかどうかは不明なのです。


人間は変化そのものよりも、変化が大きい箇所(変化の速さ)を敏感に感じるとも聞きます。確かに長い階段を延々上っているとすぐ慣れてしまうけど、急に段差が変わったり踊り場に出た瞬間に「おぉっ!?」となりますね。ちょっとニュアンス違うけれど、渋滞の一因である長く緩やかな坂道運転での「勾配錯視」とか、航空機事故の一因の「バーティゴ」現象も知られてます。とすると日没時刻の「変わり方が速い時期」につるべ落としを感じるのかも知れません。そこで、グラフCとして日没時刻の時間差(前日から何秒変化したか)を描いてみましょう。これはグラフAの曲線の傾斜を表すといっても良いでしょう。単位は「秒」です。想像と違って複雑な曲線ですが、秋分の少し前辺りに極小が来ることは分かります。(※細かいギザギザは計算誤差です。)他の時期よりも秋分付近は日没時刻が急に変わっていくので気付きやすい、ということでしょうか。なお参考までに、日の出時刻の時間差も一緒に描いてあります。

グラフC・日没時刻の前日差
グラフC・日没時刻の前日差

グラフD・薄暮時間の変化
グラフD・薄暮時間の変化


ところで、つるべが落ちる「早さ」ではなく「速さ」を言っているのではないかと言う考えもあるでしょう。ではグラフDとして、日没時刻から何分で完全な夜が来るか、つまり「天文薄暮終了時刻と日没時刻の差」を計算し、描いてみました。単位は「分」です。3月初旬と10月初旬の2回、極小になっていますね。この時期は文字通り「日没過ぎるとあっと言う間に暗くなる」のです。夏至前後に比べ、25分もの差!こどもが友達の家でうっかり週アニメ1本見入ってる内に真っ暗になり、「おかぁさーん、迎えに来てぇ…泣」的なパターンです。このグラフもそこそこ複雑な曲線ですね。

他にも色々な考えが浮かびそうですね。この記事は単純に天文的な見方だけでしたが、例えば暗くなる感じ方は気象条件(雲量、湿度や埃による空の濁り、木々の落葉による空の面積変化など)も関係するし、心的要因(センチメンタルな心と季節の心象との関連、季節性うつ病、気温変化で明暗の感じ方に違いが出るか、など)も加味すると面白い研究になりそうです。さあ、みなさんはなにが「つるべ落とし」の原因と考えますか?ぜひアイディアをお聞かせください。

参考:
「太陽と月の時刻表」を公開します(2015/11/25)
今日は今年いちばん日没が…(2015/06/29)

今日の太陽2015/10/02

20151002太陽
昨夜から今朝にかけて台風に襲われたような天気でした。このことはあとで別の記事に書きます。9時には風も止み、昼には日差しも出てきました。雲がやや多めですが、雲間を狙って太陽を撮りました。13時半過ぎ頃です。

二日前の立派なプロミネンスはさすがにもう見えませんが、活発な活動領域12422はまだ見えていました。
20151002太陽リム
昨日と今日の各1回ずつM5クラスのフレアが発生しました。この画像を撮ったときもまだくすぶってるように明るく見えていました。プロミネンスは左リムに少し見えるのみですね。また急に寂しい面になりそう…。

アルデバラン掩蔽は見えましたか?2015/10/03

20151003月とアルデバラン
昨夜晴れた地域の方は、21時台に昇った月のそばで明るい星が光ってたのに気付いたでしょうか?この星はおうし座の一等星アルデバラン。今年の春ごろには夕空で月と並び、7月以降は明け方にまわって月と並びました。今回は7月13日同様に「アルデバラン掩蔽」、つまり月に隠されてしまう現象が起きていたのです。当地では高度が低かった上に雲が多く、現象そのものは全く見えませんでした。結局月とアルデバランが雲間から顔をのぞかせたのは日付が3日になった頃です(左画像)。もうだいぶ離れちゃいましたね。

こういった月による掩蔽現象は地域性があります。今回は下の概略地図のようになっていました。赤と青のラインにはさまれた地域が現象の見えたところですが、両端のオレンジラインは複雑です。日本近くで説明すると、オレンジ線の東側(福島付近を通る)では「月に隠れる瞬間と月の出が同時」、西側(広島付近を通る)では「月から出現する瞬間と月の出が同時」になるのです。オレンジ線の中の人は「月が昇ったころはもう隠されてて、少し経つと出現」したわけです。快晴で低空まで良く見えたなら、そんな景色が楽しめたでしょう。11月26日夕方にも今年三回目のアルデバラン掩蔽があります。今度は見える範囲が更に広がるので、お楽しみに。

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※望遠鏡アイコンをドラッグすると三脚X印の緯度・経度が地図の下(欄外)に表示されます。自由に移動させてください。

参考:
アーカイブ:1.5等星以上の掩蔽