昼間の金星を探しやすい日は?2015/09/01

20120731明け方の星と金星
半月ほど前に内合を迎えた金星は、明けの明星として暁の低空に姿を見せています。ただ当地ではずっと天候が不順で、確認することができません。いつになったら晴れるのでしょうね?(左はちょっと古いですが2012年7月末の明け方を飾った金星。)

もう少し経てば金星は太陽から十分に離れ、夜明け前の暗いうちから昇るようになります。9月19日の最大光度もあっという間にやってきますね。この光度と離角が増す好機を狙って昼間に金星が見たいという方は意外に多いかも知れません。このブログでも5月22日6月20日、および7月19日の記事で紹介してきました。どれもダイレクトに金星を探すのではなく、「近くに月があるときを狙って探す」という手法です。

自動導入望遠鏡などを使わずに昼間の金星を見つける…特に肉眼のみで探すのは高いスキルが必要で、初心者では難しいでしょう。「金星は明るいから昼でもすぐ見つかる」と考えるのは甘いです。何もない青空で位置や方向を測るのは夜空よりずっと困難だし、ベースの青空だってかなりの明るさ。うっかりダイヤを落としたのは黒いアスファルトの道路ではなく、眩しく光る砂浜だった…みたいな状況なのです。でも「あの岩場の1m手前あたりで落とした」と絞り込めるなら、かなり見つけやすいですよね。月を使う方法はこれに似ています。二日月など細い時期を除けば昼間でも肉眼で何とか探せますし、予め金星との位置関係を計算しておくこともできます。更には(これ重要なんですが)月を見ることで目のピントが無限遠に合ってるかチェックできるメリットもあります。

いつか昼間の金星を探す様々な方法をまとめたいと思いますが、それに先だって「昼間に月と金星が近い日」はいつなのか計算してみました。下表はその一部です。太陽光で目を痛めるリスクを減らすため条件を限定しました。月が見つかれば表の値を使い次の手順で金星を探せます。右下図も参考にしてください。この方法で難なく金星を探せるようになったら、更に難しい「何もない青空での金星探し」という次のステップへの自信につながるでしょう。

昼間に月と金星が近い日・解説図
  • まず金星の方向角と象限(北東・北西・南東・南西)から、月のどちら側に金星がいるか把握します。ここでの北東・北西・南東・南西は、見た目通りに左上・右上・左下・右下と読み替えても差し支えありません。
  • 同時に月−金星離角を調べ、月からの角距離を把握します。手描きで十分ですからご自身で図を描くことをお勧めします。
  • 月および鉛直線(上が天頂)を基準に、把握した通りの方向と距離に目を移動します→金星発見!この時に視野角が分かっている小型双眼鏡を使うと便利です。

昼間の金星を見たことがあり、夜空の星座で方角や距離を測ることに慣れた方なら、スタートから発見まで1分もかからないでしょう。でも1回も見たことがない、星座を見ても大雑把な方角や離角すら分からないと言う方は無理だと思います。そもそも月が見つけられないのではないでしょうか。まずは夜の星空で実践経験を積んでください。月齢を聞いただけで月の正確な場所をイメージしたり、二つの星の間隔や星座の大きさを指や手で測る方法を覚えましょう。

慣れないうちは「太陽−月離角」が35度以上、かつ「月−金星離角」が5度以内の見やすい条件(表内の緑文字)から始めると良いでしょう。(太陽−月離角が20度台の場合、月が細すぎて見つからない可能性もあります。)使う双眼鏡は月と金星がいっぺんに見えるよう、視野角7度程度のものにしてください。なお日なたの観察では常に太陽光に注意しましょう。太陽が見えている必要はないので、日陰を利用して肉眼に太陽光が直接当たらないよう工夫してくださいね。また長時間に渡って明るい空(特に霞や淡い雲で白んだ青空)を観察すると目を痛める恐れがあります。下表は来年2016年6月の外合までですが、アーカイブ・昼間に月と金星が近い日には2026年1月の外合まで10年分のチャンスが全て掲載してあります。観察の参考にどうぞ。


【昼間に月と金星が近い日・2015年8月内合から2016年6月外合まで】
2015年8月16日  内合
日付太陽-月離角(度)月-金星離角(度)金星方向(度・象限)光度(等)
2015年9月10日(木) 9:0036.1(西)4.137.1(南東)-4.5
2015年9月11日(金) 9:0024.9(西)8.964.5(北西)-4.5
2015年10月8日(木) 9:0054.5(西)9.571.2(北東)-4.5
2015年10月9日(金) 9:0043.3(西)2.251.0(北西)-4.5
2015年11月7日(土) 9:0051.7(西)6.173.1(北東)-4.3
2015年11月8日(日) 9:0040.8(西)5.357.2(北西)-4.3
2015年12月7日(月) 9:0050.2(西)7.887.6(南東)-4.1
2015年12月8日(火) 9:0039.1(西)3.277.0(北西)-4.1
2016年1月7日(木) 9:0037.2(西)2.33.2(南西)-4.0
2016年2月6日(土) 9:0033.9(西)4.939.8(南東)-4.0
2016年2月7日(日) 9:0021.2(西)9.781.2(南西)-4.0
2016年3月7日(月) 9:0028.5(西)5.760.3(南東)-3.9
2016年6月7日  外合
※太陽に近いと目を痛めるので、月・金星共に太陽から20度以上離れ、かつ月と金星の離角が10度以内のみとしました。
※計算は茨城県つくば市で9:00に観察した場合の値です。観察地や時刻が異なると値も変化します。
※ここでの方向角は鉛直方向(月中心から真上または真下に向かう線)とのなす角、象限とは月から見て金星がある象限という意味です。
※計算はステラナビゲーター・位置推算ツールと自作プログラムを組み合わせて行いました。

参考:
アーカイブ・昼間に月と金星が近い日
アーカイブ・惑星カレンダー

二百十日に越境台風17号2015/09/02

昨日9月1日は一日中くもり時々雨でしたが、ごく短い時間ながら雲の隙間から青空が見えました。思えばもう雑節の「二百十日」。立春から210日経って季節の区切りを迎えます。「防災の日」とは関東大震災メモリアルというだけでなく、二百十日という本格的台風シーズンの警鐘という意味も込められているそうです。

150901_1400台風17号
9月1日に台風17号として発表される1時間前、14時の様子。右下に台風の渦、左上の晴れ間には北海道や樺太が見えます。(衛星画像:NICTサイエンスクラウド)
そんな日に気象庁から台風17号発生が発表されました。この台風は8月30日の記事に書いたハリケーンKiloが日付変更線を越えてきた越境台風です。名前もKiloをそのまま引き継ぎました。越境は台風12号に続いて今年2個目。また今日2日0時の段階では中心付近の最大風速85ノット以上の「非常に強い台風」です。このクラスに達した台風は今年10個目となりました。(2号、4号、6号、7号、9号、11号、13号、15号、16号、そして17号。ただし速報値。)15号から三連続ですね。

下に8月29日から本日9月2日の各日本時間4:00に撮影された気象衛星画像を使った手動パラパラ動画を置いておきます。台風17号だけでなく、地球の縁ギリギリにあるハリケーンIgnacioにもご注目ください。なお位置と大きさが分かるよう、この記事画像全てに自作プログラムによる緯経度線を入れました。細い線は1度メッシュ、太い線は10度メッシュです。9月1日画像で台風中心に一番近い太い経線が日付変更線(東経180度=西経180度)、太い緯線は北緯20度です。(メッシュ位置は最大誤差0.2度程度。)台風付近の緯度方向ひと目盛りはおよそ111.13km、また中緯度までの経度方向ならおよそ111.32×cos(緯度)kmとなります。直径などを測りたい方は電卓や表ソフトで計算してみてください。

昔の人がたぶん農事などを通して感覚で考え出した「二百十日」。統計上は必ずしも台風が来る日という意味ではないけれど、今回のような偶然はすごいですね。




参考:
2015年・台風関連の記事(ブログ内)

今日の太陽と夕方の淡い彩雲2015/09/02

20150902太陽
今日は(も)朝からひどい風雨でしたが、正午前から少しずつ回復し、夕方にはほぼ青空となりました。数時間以上快晴が続いてくれたのは十日ぶりくらいでしょうか。

20150902太陽
左は遅い時間ですが17時頃の太陽。強い風が残っており、撮影に難儀しました。いくらかダークフィラメントが多い程度で黒点などは見当たりません。リムのプロミネンスも右下のもの以外はパッとしませんね。高度が8度程度だったため、太陽が天地方向に0.5%ほどつぶれています。(この画像では左上が天頂です。)

20150902夕方
夕方の西空は左のような感じでした。太陽周囲に淡い雲が出て、適切な減光をしながら観察するとあちこちが虹色になっています。そう、彩雲ですね。実は午前中の雲が多いときからけっこう見えていたのですが、写真写りが良くありませんでした。

20150902彩雲
右画像は左画像の雲部分を拡大撮影し、色彩を強調したもの。今日の彩雲は全体的に淡く、気付きにくかったと思われます。日没後、明後日に東方最大離角を迎える水星を探しましたが、もう雲が多くなってしまい見えませんでした。

地球の際に嵐が三つ2015/09/03

20150903_0300台風たち
今朝の気象衛星画像を確認すると、昨日までほとんど確認できなかったハリケーンJimenaが見えました。ハワイ諸島の東の海域にいるハリケーンで、今朝の時点では「非常に強い台風」並みの勢力です。いっぽう、ハリケーンIgnacioは勢力を落とし、カテゴリーとしてはTropical Storm(形容無しの台風レベル)になりました。それでもかなり立派に見えていますね。(左は3日3:00、衛星画像:NICTサイエンスクラウド。)

縁ギリギリの嵐までこんなに良く見えるのも新しい気象衛星のスペックならではのこと。ちなみにどれくらいの範囲が見えているか計算してみると…今朝4時時点の軌道データでは東経59.34度から西経138.06度までカバーしていました。ハリケーンJimenaの中心は今日になった時点で西経143度付近ですが、3日前には気象衛星に写る範囲に到達しています。あまり縁に近いとつぶれてしまって分解しないということですね。

台風17号とあわせ、気象衛星からはハワイを囲むようなトリプル台風に見えます。でも幸い台風17号もトロピカルストームIgnacioもハワイから遠ざかりつつあるようです。まだまだ北半球の台風シーズンは終わりませんね。

参考:
2015年・台風関連の記事(ブログ内)