アーカイブ:アポロ着陸地点の観察1971/02/03



(C)NASA
アポロ計画で月に着陸した6機の「Lunar Module」はとても小さく、アマチュアが小型望遠鏡で地球から観察することは困難です。でも「どのあたりに着陸したんだろう」と興味が湧きませんか?このアーカイブはアポロLMベース観察をサポートするデータをまとめました。


《アポロLMの日照日時》

各LMの日照日時は、ユーティリティ「月面地形の日照カレンダー」を使ってください。年/LM番号/上弦下弦/観察場所(都道府県単位)を指定すると一覧表を表示できます。月高度などの観察条件も併せて調べることが可能です。(※リンク先で番号や条件を変えることもできますので、どこから入っても構いません。)




《アポロLM付近はいつ見える?》

【アポロ着陸点の位置】
対象名月面経度月面緯度月面標高
11号LM23.47314°0.67416°-1250m
12号LM-23.42190°-3.01280°486m
14号LM-17.47194°-3.64589°-322m
15号LM3.63330°26.13239°-2019m
16号LM15.50110°-8.97340°-1220m
17号LM30.77230°20.19110°-2589m
アポロ計画では11号から17号まで月着陸を目指し、このうち途中棄権した13号を除く全てが着陸と地球帰還に成功しました。NASAの公開資料によると、月着陸船(Lunar Module)の着陸地は右表のポイントです。(経度の正の値は東経・負は西経/緯度の正の値は北緯・負は南緯。)標高はLROの標高データを参照した、平均月面からの数値です。この値は測定年代や座標系によって若干異なる場合があるようです。

右表値に基づいて各LMの日出(上弦側で欠け際に達すること)と日没(下弦側で欠け際に達すること)を迎えるタイミングを計算すると、月齢や太陽黄経差の値が下表のようになりました。例えば11号ポイントは五日月ごろに日が当たり始めるので、この日以後の数日間が見頃だと分かります。観察の大雑把な予定を立てるなら、これで十分でしょう。下弦の場合は下表に達する前の数日間が見頃なので、前後を間違えないようにしてください。

初めからダイレクトに位置を特定することは難しいと思います。最初は近い月齢で大きい海や目立つクレーターを探し出せるようになってください。各LMポイント近くの大きなクレーターが分かるようになれば素晴らしい。一度にがんばらなくて良いですから、月面探険を楽しみつつ、焦らず探しましょう。アーカイブ「月の形」には太陽黄経差3°ごとに撮り分けた月面画像がありますので、下表を頼りに画像を選んで練習することができますよ。

【アポロ宇宙船・Lunar Module付近の日照タイミング】
対象名(月相)明暗境界に達する月齢幅明暗境界に達する太陽黄経差幅
11号LM(上弦)5.0 − 5.959.6° − 74.3°
11号LM(下弦)19.8 − 20.7239.7° − 254.5°
12号LM(上弦)8.9 − 9.7105.3° − 120.2°
12号LM(下弦)23.6 − 24.6285.8° − 300.5°
14号LM(上弦)8.4 − 9.299.4° − 114.4°
14号LM(下弦)23.1 − 24.1279.8° − 294.7°
15号LM(上弦)6.6 − 7.678.0° − 94.5°
15号LM(下弦)21.4 − 22.3258.4° − 274.8°
16号LM(上弦)5.7 − 6.567.1° − 82.3°
16号LM(下弦)20.4 − 21.4247.5° − 262.7°
17号LM(上弦)4.4 − 5.352.2° − 67.4°
17号LM(下弦)19.1 − 20.1232.5° − 247.6°

  • 各LMが明暗境界に一致する月齢および太陽黄経差を概算しました。主に秤動によって月面の向きがゆるやかに振動するため、月齢値なら約1.0、太陽黄経差なら約15°の揺らぎ幅があります。
  • 上弦の場合、各LMが明暗境界(=欠け際)に達してから約2日間が見頃です。下弦の場合、各LMが明暗境界に達する前の約2日間が見頃です。
  • 各LMが明暗境界に一致する正確な日時を調べる場合はユーティリティ「月面地形の日照カレンダー」をご利用ください。



《アポロLMファインディングチャート》

全体的な位置、および詳細な位置について、月面実写やCGを使ったシミュレートマップを掲載します。自由にお使いください。CGマップはNASAが公開する月面標高データを使い、自作プログラムで描いてます。このため実際の日照陰影と若干異なりますのでご了承ください。

 11号LM12号LM14号LM15号LM16号LM17号LM
アポロ11号LM位置
アポロ12号LM位置
アポロ14号LM位置
アポロ15号LM位置
アポロ16号LM位置
アポロ17号LM位置
アポロ11号LM位置(下弦)
アポロ12号LM位置(下弦)
アポロ14号LM位置(下弦)
アポロ15号LM位置(下弦)
アポロ16号LM位置(下弦)
アポロ17号LM位置(下弦)
Apollo11LM-wide1
Apollo12LM-wide1
Apollo14LM-wide1
Apollo15LM-wide1
Apollo16LM-wide1
Apollo17LM-wide1
Apollo11LM-wide2
Apollo12LM-wide2
Apollo14LM-wide2
Apollo15LM-wide2
Apollo16LM-wide2
Apollo17LM-wide2
Apollo11LM-wide3
Apollo12LM-wide3
Apollo14LM-wide3
Apollo15LM-wide3
Apollo16LM-wide3
Apollo17LM-wide3
Apollo11LM-wide4
Apollo12LM-wide4
Apollo14LM-wide4
Apollo15LM-wide4
Apollo16LM-wide4
Apollo17LM-wide4
 11号LM12号LM14号LM15号LM16号LM17号LM

【主な月面地形表記】
表記(複数形表記)日本語表記
Catena連鎖クレーター
Dorsa(Dorsum)尾根
Lacus
Mare/Oceanus
Mons
Montes山脈
Palus
Promontorium
Rima(Rimae)
Rupes断崖
Sinus入江
Terra大陸
Vallis峡谷
  • A行とB行の緑矩形は各LMを中心とした経度30°×緯度30°の範囲です。
  • 見かけの位置は観察日の秤動によって少し変わります。また月縁に近いほど歪みます。
  • A…上弦側での位置の目安です。緑矩形全体に日が差し、かつ矩形西端が明暗境界に近い実写画像を使っています。
  • B…下弦側での位置の目安です。緑矩形全体に日が差し、かつ矩形東端が明暗境界に近い実写画像を使っています。
  • C行からF行までは標高データを使ったシミュレートマップです。各LMを中心に、A・B図の緑矩形(経度30°×緯度30°)を地図図法で描きました。低緯度地はメルカトル図法、中緯度地はランベルト正角円錐図法です。
  • C…傾斜量+標高マップです。濃い色ほど急斜面、明るい色は平坦地、ブルーグレイ色ほど低く、ベージュ色ほど高い土地です。裏技ですが、この地図画像をPhotoshopなどで彩度100%にすると青と黄色にクッキリ分かれますので、標高0mがどこなのか分かります。
  • D…Cに地形名を加えた図です。
  • E…日射シミュレートマップです。実写ではありません。太陽がほぼ真東、高度15.0°にあるときの陰影や明度を示します。これは日照カレンダーで各LMの太陽高度が0°になってからおよそ30時間後の状態と考えてよいでしょう。
  • F…Eに地形名を加えた図です。
  • DとFは最小直径8km以上のクレーターと従属クレーター名を全て書きましたが、地図端や地形の重なりが多過ぎるところ等は一部省きました。敢えて日本語表記ではなく国際表記にしました(右上表)。国際表記での検索に慣れることでNASA等を含む世界中の資料/画像閲覧のチャンスが増えると考えるからです。
  • 地形名と位置はIAU(国際天文学連合)のデータに基づくものです。



《資料:アポロ月探査のスケジュール表》

アポロ計画年表を調べるとき、混乱の元になるのが時刻表記。主に次のような理由が考えられます。

  • 資料によって微妙に時刻が違うことがある。NASA内でも一元化されていない。
  • 一次情報に辿り着けない、出典元が書かれていない等。
  • 世界時(UT)で書かれる場合と米国の標準時で書かれる場合がある。
  • 打ち上げ時期によって、米国東部標準時が夏時間(EDT)と冬時間(EST)とで分かれている。
  • 日本語訳されるときに日本標準時(JST)に直っている場合と直してない場合がある。
  • 書かれている時刻が何基準か分からない(UTやESTなどの表記がない)場合がある。

以下の表はNASAのSpace Science Data Coordinated Archive(NSSDCA)のMaster Catalog SearchからSpacecraft Queryに従って調べた各日時(UT)と、それをJSTに変換した値を掲載しました。

【アポロ月探査のスケジュール表】
月探査機打ち上げ日時月着陸日時
月齢(月面太陽高度)
月出発日時
月齢(月面太陽高度)
地球着水日時ミッション
総時間
アポロ11号
1969年
7月16日 13:32:00 UT
(7月16日 22:32:00 JST)
7月20日 20:17:40 UT
(7月21日 5:17:40 JST)
6.25(10.70°)
7月21日 17:54:01 UT
(7月22日 2:54:01 JST)
7.16(21.71°)
7月24日 16:50:35 UT
(7月25日 1:50:35 JST)
195時間
18分35秒
アポロ12号
1969年
11月14日 16:22:00 UT
(11月15日 1:22:00 JST)
11月19日 6:54:35 UT
(11月19日 15:54:35 JST)
9.36(5.17°)
11月20日 14:25:47 UT
(11月20日 23:25:47 JST)
10.68(21.10°)
11月24日 20:58:24 UT
(11月25日 5:58:24 JST)
244時間
36分24秒
アポロ14号
1971年
1月31日 21:03:02 UT
(2月1日 6:03:02 JST)
2月5日 9:18:11 UT
(2月5日 18:18:11 JST)
9.43(10.35°)
2月6日 18:48:42 UT
(2月7日 3:48:42 JST)
10.83(27.26°)
2月9日 21:05:00 UT
(2月10日 6:05:00 JST)
216時間
1分58秒
アポロ15号
1971年
7月26日 13:34:00 UT
(7月26日 22:34:00 JST)
7月30日 22:16:29 UT
(7月31日 7:16:29 JST)
8.54(12.02°)
8月2日 17:11:22 UT
(8月3日 2:11:22 JST)
11.33(41.40°)
8月7日 20:45:53 UT
(8月8日 5:45:53 JST)
295時間
11分53秒
アポロ16号
1972年
4月16日 17:54:00 UT
(4月17日 2:54:00 JST)
4月21日 2:23:35 UT
(4月21日 11:23:35 JST)
7.25(14.74°)
4月24日 1:25:48 UT
(4月24日 10:25:48 JST)
10.21(50.00°)
4月27日 19:45:05 UT
(4月28日 4:45:05 JST)
265時間
51分5秒
アポロ17号
1972年
12月7日 5:33:00 UT
(12月7日 14:33:00 JST)
12月11日 19:54:57 UT
(12月12日 4:54:57 JST)
5.98(13.36°)
12月14日 22:54:37 UT
(12月15日 7:54:37 JST)
9.11(47.81°)
12月19日 19:24:59 UT
(12月20日 4:24:59 JST)
301時間
51分59秒

  • 参考までに、11号船長アームストロングさんが人類最初の一歩を標した日時は、1969年7月21日 2:56:15 UT(1969年7月21日 11:56:15 JST)です。「人類が月に到達した」と言うとき、月着陸船着陸日時とアームストロングさんが降り立った日時とがゴッチャになっている資料もあるのでご注意。
  • ミッション総時間は打ち上げから着水までとしました。
  • 月齢および月面太陽高度は自作プログラムによる計算値です。